アフィン変換の落とし穴
アフィン変換

 ヘルマート変換について知っている人は多いと思いますが、アフィン変換については知らない人が多いのではないでしょうか。

 ところがネットの世界では、例えばGoogleで「ヘルマート変換」を検索すると103件(H18.5.8現在)ヒットするのに対し、「アフィン変換」は何と41000件もヒットします。

 また、「測地成果2000導入に伴う公共測量座標変換マニュアル」第37条には、アフィン変換はありますがヘルマート変換はありません。

 一般的に、ヘルマート変換よりアフィン変換の方が変換精度がよいとされますが、変換特性を理解しないまま利用すると、とんでもないことになるという例をご紹介します。

 アフィン変換についての知識がない人は、ネットで検索してみてください。

観測例

 まず、HelmAfin.xlsを起動します。

 次に sample.xls を開いて、既成座標値のセル(A3:C6)の範囲を選択しコピーして、HelmAfin.xls の (B9:D12)の範囲に張り付けます。
 さらに、sample.xlsの観測座標値(変換基準点)例3のセル(J3:L6)の範囲を選択し、同様にHelmAfin.xlsの(F9:H12)に張り付けます。

 K1-3、K2-3、K3-3、K4-3を変換基準点とし、アフィン変換を選択して変換計算を行います(計算結果PDF)。

 この例は極端なものですが、以下を想定しています。
1.ローカル座標で作成された地積測量図を元に、紛失した境界点を復元します。
2.既成座標(K1〜K4)は現存する境界点の座標です(紛失した点については省略してあります)。
3.K1-3、K2-3、K3-3、K4-3は、別の座標系でK1〜K4を観測した座標です。

計算結果の評価

 計算結果(sample.pdf参照)のXYの残差、変動量は全ての点で0であり、当然標準偏差も0となっています。

 次に、この結果からは分かりませんが、既成座標の点間距離 K1-K2、K2-K3、K3-K4、K4-K1は100.000mであり、 変換計算後の点番11-12、12-13、13-14、14-11の点間も100.000mとなっています。

 残差が0、当然標準偏差も0、点間距離も変換前と変換後でぴったり一致、さてこの変換は境界復元を行うにあたってふさわしい変換計算であったのでしょうか。言い換えると、この変換結果を元に亡失点の復元測量を行ってもよいのでしょうか。

 答えは、これらの点(変換前の点と変換後の点)をプロットしてみれば明らかです。これは極端な例ですが、標準偏差が小さいからといって正しい変換が行われたことにはならない場合もあります。

 また、sample.xlsの観測座標値(変換基準点)例1、例2も同様に張り付け、ヘルマート変換(伸縮率1設定および解除)、アフィン変換を行ってみてください。

 例1は、ヘルマート変換、アフィン変換のいずれの変換でも、残差、移動量が0になります。
 例2は、ヘルマート変換(伸縮率FREE)、アフィン変換で、残差、移動量が0になります。

 どのような場合に、このような変換結果になるのかを知っておくことが必要でしょう。

アフィン変換の用途
 アフィン変換にはこのような危険が潜んでいますが、その特性を理解して使用すれば境界復元を行ううえで有効な武器となります。
  どのような場合に使うとよいかは、みなさん研究してみてください。